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Does She Love You ? [古典ポップス体験]

 ビートルズの「She Loves You」。

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                             She loves you, yeah, yeah, yeah
                            She loves you, yeah, yeah, yeah
                            She loves you, yeah, yeah, yeah

 第一声から始まるこの印象的なサビ。この曲は、ビートルズサウンドを象徴させる作品として第一に挙げられるべきだろう。
 その‘よさ’を感じるのは意図も簡単なのに、その理由を説明するのは極めて難しい。そこが、ビートルズサウンドらしさなのだ。
 プロデビュー後、この曲が発表されるまでに、まだ、それほどの時間が経っていない。つまり、この時のビートルズは、メジャー・プロとしては、コナレていないのだ。そのことによって逆に、才能がむき出しになっている。この曲から特に‘らしさ’を感じるのは、そのためではないだろうか。
 技術的な知識が身につくなどでコナレていくと、おそらく曲を作る段階で、そのあとの具体的なレコーディング過程がイメージできてしまう。その分、トータル的な完成度は上がるだろうが、そのように出来た曲は、大げさに言えば、表面がつるつるの大きな球体のようなものになってしまうような気がする。
 才能というものは、もともとは鋭角的なものであるはず。おそらく、その鋭角性は、コナレていく過程で見えにくくなるものなのだ。
 「She Loves You」の時のビートルズは、自分でも訳がわからないまま、才能が自分の中から流出している状態であったはずだ。そこに造作もなく存在している才能の鋭角性は、却って、僕たちの心を直接突き刺す結果になる。
 
 昔、岩谷宏氏(『Rockin' on』 創刊時メンバー)が、冒頭のサビを、確かこんなふうに訳していた。
 
               あの子、おまえのことが好きなんだって
 
 あの子にモーションを示せない友達に、‘告る’ように背中を押しているような様子だ。
 僕は断言する。この詞の‘おまえ’は、ジョン・レノンつまり自分自身のことであると。
 ジョンは、好きなあの子に告白する時、そんなふうなことを別な自分に言わせ、臆病になる自分に拍車をかけていたに違いない。
 よし、行くぞ! 緊張感を勢いでぶっ飛ばす。
 ロックンロールというドラッグを飲み、彼はこんなふうに心で叫んで爆走したのだ。
 
               あの子、おまえのことが好きなんだって
               あの子、おまえのことが好きなんだって
               あの子、おまえのことが好きなんだって
 
 中期の曲だが、もう1曲、似たような曲がある。
 「You're gonnna lose that girl」 (邦題:恋のアドバイス)。やはり、ジョンの作品だ。
 
         今夜、彼女を連れ出さないと、あの子、心変わりしてしまうぜ
         おまえは今、あの子を失おうとしてるんだよ わかってる?
 
 もちろん、これも‘おまえ’とは、自分のことだ。
 ジョンは、きっと、二の足を踏む自分自身を、そうやって追い込んでいったのだ。
 ん、待てよ。これはジョンだけではないぞ。多くの男たちも似たようなものだろう。誰でも、思い切ったことは追い込まれてやるのだ。
 火事という究極の追い込みがなければ、バカ力は起きない。
 
 シャウト一発。She Loves You ! ゆけぇ。忘我、体当たり、GO ! だ。
 中学の頃、まだ経験による理屈を持っていない僕に直接伝わってきたあの感覚は、理論を駆使される前のビートルズサウンドがもたらしていたのだった。
 
 ポール・マッカートニーは、今でも好んで、「I saw her standing there」を歌っている。
 それは、かつての頃だけのむき出しの青い才能に、今の彼自身がエキサイトできるからなのだ、 きっと。

 

 


 


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