神頼みの寓話 [丘の上から]
初詣に行った。
大勢の人たちが、順番に手を合わせている。
僕は、祈りの強さが誰にも負けないよう、真剣に願いを念じた。
その時、僕の中で、神が問うた。
ここに来ている人たちの誰でもない、おまえの願いを、特に、わたしが叶える理由を教えてくれないか。教えてくれたら、叶えてあげよう。
僕は、考えた。
それらしい理由を、とにかく挙げてみるよう、試みた。
僕が助けられる理由。他の人たちではない僕が助けられる確かな理由。
それが分かれば、それさえ分かれば、
叶えてもらえる。
でも──、
ない。
こんなに叶えてほしいのに、こんなに助けてほしいのに。
ない。
考えても考えても、ない。
ないです。神様。
僕は諦めて、そう答えるしかなかった。
ほどなくして、なぜか、願いは叶った。
神様は言った。
おまえは、欲することなく望んだのだ。
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