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『無気力一代男日記』 2.尋常ならざる凡庸な望み [俯瞰日記]

 何の就職先もないまま、大学を卒業した。
 大学3年で就職活動をして内定を取る、という常識的なパターンすら知らなかった。
 
 とにかく自由でいたかった。
 まぁ、よくある凡庸な望みだ。
 その一方で、人に認められる社会的成功も望んだ。
 これも、よくある身勝手な望みだ。
 
 僕は十代の頃から──今でもそうだが──、‘将来’というものを信じたことがなかった。
 今が、あの頃の将来なのだが、今の年齢まで生きられるとは思っていなかった。
 だから、そのときそのときの‘今’の充実、あるいは幸福だけが頼りだった。
 
 未来のために、今苦しむという理屈は、僕にとって無意味な苦痛でしかなかった。
 結果的に蓄積となるのはいいが、それを目的とした努力には身が入らなかった。
 そんな僕が、土台、常識的な志向に心から順応できるはずがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

  


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