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『無気力一代男日記』 6.‘未来’に先立つもの [俯瞰日記]

 僕がコミットしようとしているアルバイト3人のチームは十数年続いていて、リーダーの三橋は既に70を越えている。体力的にも引退は近いだろう。
 その後継が必要だ。
 通常なら、チームで長年経験を積んできた残り二人(共に中年男)のどちらかがリーダーになるのがセオリーなのだが、いかんせん、二人とも、それに向かないようだ。
 一方の中年・松木は、根は真面目な飲んだくれの半アル中男。毎日、定例的に遅刻して来る。来る時刻の遅れは、前日の酒の深さに比例しているようだ。
 もう一方の中年・長沢は、内向的で、先方に問い合わせの電話ひとつできないという元アニメーター。
 もし、長老・三橋がいなくなり、経験者がこの二人だけになったら。
 何のことはない。うちの会社でこの業務を継続することが難しくなるというだけのことだ。
 何の策略もいらない。場は整っている。
 社員の僕が、そのときリーダーになれば良い。
 謀らずして、状況も会社も、それを望んでいる。
 だから、このタイミングで、僕はこのチームにコミットし、業態を掴んでおく。
 それは、いざという時に、僕が安定した仕事の枠を得ることを意味する。
 
 只、未来というものは、常に意外な部分で予想をはずすものだ。
 未来は空間的広がりであり、人間の目論見など、その中に引かれる一本の線に過ぎない。
 ペシミストにもオプティミストにも、表の可能性と裏の可能性は常に存在する。
 それも瞬間瞬間に。
 だから、人生は面白いのだと、ここは、あえてかっこつけよう。
 人間(じんかん)万事、塞翁が馬。 
 僕は、不安材料に対して細工はするが、結果への期待は、吉凶五分五分まで抑制する。
 只、淡々と準備し、そして、忘れる。
 たった今の安らぎが最も重要だ。
 それは、期待の中にも、もちろん不安の中にもない。
 それは、どうやら、その中央に入口があるらしいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


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