『無気力一代男日記』 13.恐怖による苦痛にアガく心 [俯瞰日記]
今、僕の心は、恐怖から来る憂鬱さに支配されている。
要求されている内容と会社への報酬が恐ろしく合わない不条理な現場 (『無気力一代男日記 5.』)。そして、そこのスタッフたちの、あのゾンビのように無表情な顔つき。
彼らを侮辱するつもりも、また、僕にその資格もないが、僕にとって、あの現場は『蟹工船』の糞壺なのだ。
ややドぎつい表現になってしまうのは、弘前専務が来てから、ずーっと続いているこの巨大な憂鬱さのせいだろう。
抗い難い感情だ。
そして、理性は言う。
嗚呼、だが、そんな日が来ることは、何年も前から予想がついていたことだ。
僕は、この数年、正社員の身分にあって、ほとんど不労所得のような給料をもらいながらの有り余るモラトリアム期間を、どう過ごしてきたのだろう。
僕は、自分の持ち前の怠惰さの前に、全くの無力だった。
運命は、長いスコレを与えてくれた。
その中にあって、事実、僕は、何もしなかったのだ。
僕の中の凡庸な良識が言う。
瀬崎社長からどんな指令があっても、おまえに、それを不服とする資格はない、と。
あえて、その良識さえ度外視して、エゴイスティックに僕の個人的人生の戦略として考えても、僕は、自ら、それをしくじったのだ。
それでも、僕の感情は、アガかずにはいられない。
国民全体の利益より、真っ先に自分の既得権益を守ろうとするあの官僚たちのように。
どんな理屈も、どんな教えも無力である。
このアガき──僕の中の恐怖への反応──は、誰にも止められない。
僕は、この苦痛を終わらせるものを自ら見出すほかないのだ。
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