LOVE……, Is it easy ? [古典ポップス体験]
「愛こそはすべて」だってぇ?
そりゃあ、この曲が発表された1967年は、今と比べりゃ、素直な人が格段に多かったとは思うけどね。
それにしても、そんなベタな言葉を、いきなりその気になって聴ける奴を、悪いが僕は信用できない。大半は、端迷惑なアホ野郎なんだろうなぁ、ってピュア(?!)に思ってしまう。
この曲を本当に聴かせるべきは、そんなアホ野郎以外であるということを、Aメロの詞は示している。
There’s nothing you can do that can’t be done
ん~、訳しにくいというか、理屈っぽい英文だ。直訳が難しい。
要するに、という枕詞を省略して、独断で日本語にしてみよう。
できないものは誰にもできないさ
僕たちは、無事に社会生活を営むために、多くのやらなければいけない(have to)、あるいは、すべき(should)ことを抱えている。
それらの義務は突き詰めれば、結局、みんなの生活の糧を個々人が生み出すこと、だと僕は思っている。
さらに、この社会にあっては、その営みをある程度、円滑に進めるために、心地よい人間関係というものが特に重要性を帯びている。
僕たちが時々感じるあの変なプレッシャーは、たぶんそんな基本的な前提に起因するのだろう。
例えば、こんな問いが浮かんでしまう状況だ。
思いやりは義務か。
優しさは義務か。
究極、愛は──、
義務か。
よく直面する下世話なシーンとして、電車のシートに座っている時に年寄りが目の前に立つというシチュエーション。
この時感じるプレッシャーと葛藤。結局、エイと決心して譲る。少しほっとする。
その時、‘実際に’思いやりは発動していたか、優しさは発動していたか。
愛は──、発動していたか。
人目と義務感。それだけではなかったか。ほっとした事実が、それを語ってはいないか。
もしそうなら、愛という観点では、その時、僕たちは、あ、いや、僕は──、
‘何もしていない’。
That’s REALITY. (「God」 by J・Lennon)。 それが現実だ。
思いやりを演じても、心に思いやりはやってこない。
優しさを演じても、実際には優しさはやってこない
つまり、愛を演じても、愛はそこにはない。
愛は──、
‘できない’のだ。
愛は、意図的に成すという意味では、不可能なのだ。
なのに、僕たちは、できないことをしたがっている。
ジョンは、歌の中で「愛こそはすべて」と言う前に、その重要な前提をAメロで語らなければならなかった。
皮肉なことに、‘愛こそはすべて’などと能天気に語る人の言葉のほぼ全てが嘘だと知った時にのみ解ることが、「愛こそはすべて」という真実なのだ。
できないものは誰にもできないさ
という事実を‘見る’ことは重要だ。
でないと、僕たちは愛を、‘演じてしまう’。
愛が発動しなければ、年寄りに席を譲ることと譲らないこととの間に大差はない。もちろん、その年寄りにとっては大違いだが。僕が生活に困っている時に、誰かが、自分の名声が欲しいがためだけに100万円を無条件に与えてくれたら、僕は、その人にこの上なく感謝して、こう言うだろう。「げに、偽善とは、こんなにもありがたきことかな」。
それでも、僕は、理屈での安直な理解を拒否するために、敢えて確認する。
思いやりは、義務じゃない。
優しさは、義務じゃない。
もし、自分の中に愛を見出したかったら、その人は愛を演じてはいけない。束の間の満足のために、たとえ、それが他人のためになるような場合でも、愛を演じた途端に、僕たちは、愛を遠ざけるのだ。
それ故に、愛は、できない。
そして奇妙はことに、本当に人を助けるのは、その‘愛’だけだったりする。
できないものは誰にもできないさ
No one you can save that can't be saved
実のところ、誰かが誰かを救うってことなんて、ない
Nothing you can know that isn't known
何が、その人のためかなんて、誰にも分からないさ
それでいい。知ったかぶりをやめて、演技をやめて、できないことをしようとすることを本当にやめた時に、ふと起きる衝動(時によって激情かもしれない)、がある。その時には葛藤も決心もない。ただまかせるだけである。いかなるプレッシャーもなく、水が流れるようにできるという感覚。
愛が発動し、それに身をまかせ、それと共に生きる。これは、大多数の人のあり方と比べたら奇跡とも呼べるものなのだが、その奇跡をもたらすのが、どうも愛のみらしいのだ。
もし万が一、僕が愛と共に在ったら、できることだけを望み、それを、只、単純に‘する’んだろうな。
できないものは誰にもできないさ
でも、只、愛がここにあるだけで、
できないことは、きっと何もなくなる。
うっそ~、ホントに~?
それが、もし本当なら、確かに、レノンの言う通り、
必要なものは愛だけ(Love is All You Need)
なのかも。
本当に──、そうなのかもね。
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